ロシアのプーチン大統領を批判し英国に亡命したロシア連邦保安局の元幹部が、ロンドンで毒殺未遂に遭った疑いが強まり、19日までにロンドン警視庁が捜査に乗り出した。元幹部は、プーチン政権に対する厳しい批判で知られた著名女性ジャーナリスト殺害事件に関する情報を入手した1日に体調を崩し、現在は生命が危険な状態になっている。元幹部らは「ロシア当局による犯行」としている。
英主要紙の報道などによると、ロシア連邦保安局(FSB)の元幹部アレクサンドル・リトビネンコ氏の体内からは、英国で使用や保有が厳しく制限されているタリウムが検出された。ロンドン警視庁は毒殺未遂に遭った可能性があるとみて、調べている。
元幹部はプーチン大統領がFSB長官時代の98年、上司から殺人や誘拐などの指示を受けたとFSBの暗部を暴露し、ロシア当局にマークされるようになった人物。プーチン大統領を批判して00年に政治亡命を申請、今年10月に英国の市民権を取得した。チェチェン独立派への対応などでプーチン政権を批判し、10月に殺害された著名女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤさんとは友人だったという。
元幹部は、旧知のイタリア人男性から「ポリトコフスカヤさん殺害に関する、重要な情報がある」との連絡を受け、1日、このイタリア人と会い、殺害事件に関与したとされる人物名が書いてあるリストなどを受け取った。その夜に突然、嘔吐(おうと)が始まって入院、数日後にはすべての髪の毛が抜け落ちた。症状は安定しているが、骨髄や白血球に異常が見られ、生命が危険な状態にあるという。
元幹部は「イタリア人とは広場で会い、彼が『座って話したい』というので、近くのすしバーに案内した。わたしはランチを注文したが、彼は何も食べず、神経質になっている感じがした」と話した。イタリア人の行方は分かっていない。
旧ソ連圏では、ウクライナのユシチェンコ大統領が04年9月に毒を盛られるなど、「毒物」によるとみられる数々の不可解な事件が起き、プーチン大統領の出身母体、旧ソ連国家保安委員会(KGB)関係者の関与がしばしば疑われる。元幹部が所属したFSBはKGBの後継機関。元幹部と知人らは「ロシア当局の犯行。亡命に対する復讐(ふくしゅう)に違いない」と主張しているという。
日刊スポーツ[2006年11月20日8時44分 紙面から]