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難病児募金あざける「祭り」

ネット君臨(1) 第1部 失われていくもの_1

20070101k0000e040033000p_size6.jpg 12月11日の成田空港。米国に向かう航空機に乗り込む上田さくらちゃんを母和子さんが後ろから抱きしめた=竹内幹写す

また死ぬ死ぬ詐欺ですかw

2ちゃんねる上、匿名攻撃

NHKキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

両親「裸で歩くよう」


 臓器提供者はまだ見つからない。4歳のクリスマスは、米カリフォルニア州の大学病院に近いアパートで迎えた。ネコのぬいぐるみをプレゼントされ「ネコちゃんが来たよ」とはしゃいだ。

 難病の拘束型心筋症と診断された東京都三鷹市の上田さくらちゃんが助かるには、海外で心臓移植を受けるしかない。1億円を超える手術費用は募金に支えられている。

 新聞各紙に「さくらちゃんを救う会」の募金活動の記事が掲載された昨年9月22日朝。インターネット掲示板「2ちゃんねる(2ch)」に家族を中傷する書き込みが始まる。「また死ぬ死ぬ詐欺ですかw」。「w」は笑いの意味だ。移植の募金はこれまでも「会計が不透明」と批判されてきた。

 NHK勤務の父昌広さん(54)と母和子さん(45)が記者会見で職業を「団体職員」と公表したことも災いした。後でNHKと答えたが、手遅れだった。「NHKキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!」と顔文字を付け、はやし立てる。「高給取りを隠して同情を買おうなんて詐欺だな」

 両親が借金などでねん出した3000万円の自己負担を公表しても攻撃はやまない。ローンが残る住宅しかないのに「十数億の資産がある大地主」と虚偽の情報が書き込まれた。自宅の登記簿や写真もネット上にさらされた。「だまされて募金したので返してほしい」。救う会にはメールや電話が続いた。救う会にはメールや電話が続いた。

 「裸で歩いているような恐ろしさ。眠れない時もありました」。和子さんは家の前で携帯電話のカメラを構えた人影を忘れられない。「親ですから娘が救われるのなら構いません。でも支えてくれる人たちが疲れていくのを見るとつらい」目が潤んでいた。

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 年の瀬の東京・渋谷。記者はネット上のハンドルネーム(HN)「がんだるふ}を名乗る男に会った。元大手フィルムメーカー社員。今はイベントプロデューサーという。58歳。募金批判の中心人物だ。

 ──募金を払わなければいいだけなのに、なぜ攻撃するのか。

 ◆臓器移植問題は深いのに「かわいそう」で思考停止になっている。募金は物ごいと一緒だ。

 ──書き込みには中傷や誤報がある。

 ◆ネット上の罵詈雑言はノイズ。被害と感じるのは弱いからだ。

 ──匿名での攻撃はアンフェアでは。

 ◆名前は記号。本質は書いた内容にある。

 ──実名でも書ける?

 ◆それは書けます。

 ──実名記事にしたいが。

 ◆載せないでほしい。「がんだるふ」というネット上の人格でやってきたから。

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 さくらちゃん一家が渡米する2日前の12月9日夜。新宿の居酒屋で20〜30代が中心の男女約100人が忘年会を開いた。全員が2chの利用者・2ちゃんねらーだ。募集の掲示板に記者もHNで登録し、参加した。互いにHNで呼び合う。「どこにいる?」という質問は住所ではなく、よく書き込む掲示板のことだ。

 一連の書き込みをどう見ていたのか、何人かに尋ねた。「あの募金はおかしい」「家を売ればいい」。掲示板の中傷に疑問を感じてはいない。

 ネットでは住人たちが一つの話題に群がり、ときに「悪意」が燃えさかる。彼らはそれを「祭り」と呼ぶ。

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 インターネットの利用者は国内で8000万人を超える。便利さや効率をもたらす一方、私たちはネットに依存するあまり、いつの間にか支配され、何かをなくしてはいないだろうか。ネット社会をどう築けばいいのか、まず第1部は身近な現場から報告する。(2面につづく。3面に関連記事とネット用語=太字)


     

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