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「これがネット 仕方ない」

ネット君臨(1) 第1部 失われていくもの_3

情報いろいろあるから面白い 中傷は国民性の問題

 ネット上の掲示板に匿名で個人への中傷が書き込まれる問題を、管理する側はどう考えているのか。最大の掲示板2ちゃんねる(2ch)の管理人、ひろゆき氏(30)は毎日新聞の取材に「ネットの仕組みだから仕方がない」と答え、規制は難しいとする認識を示した。大学時代にネットの発展を体験し、IT(情報技術)の旗手を輩出する「ナナロク世代」の一人は掲示板を東京の歌舞伎町に例え、「きれいじゃない情報もあるから面白い」と語った。

奇抜な発想「ナナロク世代」

20070101k0000e040032000p_size6.jpg インタビューに答える「2ちゃんねる」管理人の西村博之さん=山本晋写す

 ひろゆき氏は76年生まれ。その前後に生まれた通称「ナナロク世代」は次代のITベンチャーを担う。ネット交流サービス・SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の最大手「ミクシィ」や検索サービス「はてな」の社長らだ。

 この世代が大学に入学した時期にOS(基本ソフト)のウィンドウズ95を搭載したパソコンが登場し、ネットの利用が本格的に始まる。卒業するころはデフレ不況で就職氷河期。笠原健治ミクシィ社長は「パソコンやネットに慣れ親しんだ年代。仕事は自分たちで何とかしなくちゃ、という意識が芽生えやすかった」と語る。

 ITベンチャーの歴史を振り返ると、孫正義ソフトバンク社長(49)らの第1世代、楽天の三木谷浩史社長(41)らの第2世代に続く第3世代に当たる。先輩に比べてカネもうけへの執着が薄いといわれ、笠原社長も「みんなが楽しむことができればいい。個人的に欲しいものはあまりない」と言う。第1世代でアスキー元社長の西和彦さん(50)は「我々にはない奇抜な発想を持っている」と分析する。

 彼らが生み出した2chやミクシィをのぞいてみると、ユーザーの間に既存のメディアへの強い不満もうかがえる。2ちゃんねらーにとってマスコミは格好の批判材料だ。ライブドアのフジテレビ乗っ取り騒動では、掲示板にライブドアを支持する声はあふれた。

 社会への影響力も大きい。新潟県中越地震では被災者に携帯カイロを送る運動が盛り上がった。東芝社員の顧客への不適切な対応を告発した「東芝クレーマー事件」は副社長が謝罪会見に追い込まれた。「おたく青年」2ちゃんねらーが掲示板の書き込みで応援するラブストーリー「電車男」は100万部を超えるベストセラーになった。

 一方で、2chの運営にもかかわったフリージャーナリスト、井上トシユキ氏(42)は「電車男以降、新しいユーザーが入り、書き込みのレベルが下がった。かつては『祭り』をやるにも義侠心や熟慮があったが、今は悪ふざけや単なる魔女狩りになっている」と指摘する。


「2ちゃんねる」管理人 ひろゆき氏

 ──2chの匿名性をどう思うか。

 ◆匿名の良さもあるし、実名でやりたい人もいる。書く人の選択の問題。

 ──匿名性の良さは。

 ◆例えば安倍首相が実名でネット掲示板に書き込んだら議論どころじゃなくなる。純粋に議論をするのなら、人格はないほうがしやすい。

 ──中傷や個人情報の暴露が行われてる。

 ◆度を超したものは削除すればいいだけ。

 ──削除までに時間がかかり、ネットの他の場所に広がってしまう。

 ◆それはネットの仕組み。世の中に銃がなければ平和だよねっていうのと一緒で、あるから仕方がない。

 ──非がないのに中傷を受ける人もいる。

 ◆ネットのせいでなく、それが好きな国民性の問題。ネットがなくても内輪で楽しむはずだ。

 ──2chは内輪の話を表に出してトラブルになっている。

 ◆規模が大きいだけ。2chがなくてもネットがある限り、海外の掲示板などほかの場所に行く。

 ──「祭り」はネット上だけでなく対象者の家の撮影に行ったり、迷惑電話を掛けたりする。

 ◆2chの書き込みを削除する権限はあるが、それ以外の行動を僕には止めようがない。

 ──匿名掲示板は個人をつるし上げる大衆心理が働きやすいのでは。

 ◆(中傷を面白がる)人間の本質は変えるべきだと思うが、仕組みとしては無理。それが出来たらノーベル賞が取れる。

 ──誤った情報が独り歩きすることも多い。

 ◆既存のメディアが「冤罪報道」をした松本サリン事件と一緒。ただ(ネットの方が)間違う可能性は高いと思う。ネットはうさん臭いもので良い。大事なのは使い方を教育すること。

 ──法で規制すべきだとの意見もあるが。

 ◆海外とつながるネットを国内法で規制しても絵に描いた餅だ。

 ──あなたの管理責任は。

 ◆発言の妥当性を見極めてから載せるべきだとの意見もあるが、それはしなくてもいいのが今の法律。文句を言いたければ法律を作って下さいと国会議員に言うべきだ。

 ──2chは今後も「怪しい」情報が交じりつつ続くのか。

 ◆(危険なのに人が集まる)歌舞伎町と同じ。きれいな情報だけを集めることは難しい。いろいろな情報があるから面白いこともある。




インターネットと2ちゃんねるの歩み

95年 8月 ウィンドウズ95発表
96年 4月 ひろゆき氏が中央大入学
       ヤフージャパン運営開始
97年 5月 楽天市場開設
98年 9月 グーグル設立
99年 2月 NTTドコモが「iモード」サービス開始
    5月 ひろゆき氏が「2ちゃんねる(2ch)」開設
    6月 東芝クレーマー事件で「祭り」
00年 2月 不正アクセス禁止法施行
    5月 西鉄バスジャック事件。
       逮捕された17歳の少年は2chに書き込んでいた
01年 5月 ネット百科事典「ウィキペディア」日本語版登場
    9月 「ヤフーBB」開始。ブロードバンドが本格普及へ
   10月 ウィンドウズXP発売
02年 6月 東京都内の動物病院が2chをめぐる名誉棄損の訴訟で勝訴。
       ひろゆき氏に400万円の賠償命令
    7月 迷惑メール防止法施行
03年 1月 2chが書き込んだ利用者のIPアドレス保存を始める
04年 2月 ソーシャル・ネットワーキング・サービス「ミクシィ」始まる
    5月 ファイル交換ソフト「ウィニー」開発の東京大助手を
       著作権法違反幇助容疑で逮捕
   10月 イラクで人質の邦人男性殺害。2chに遺体画像のリンク
       2chでブームになった「電車男」の単行本発売
05年 2月 「ユーチューブ」が動画投稿サービス開始
       電通が04年総広告費発表。ネット広告がラジオを抜く
       ネット利用者数7000万人を超える
    8月 政府が10年までのブロードバンド・ゼロ地域の解消を掲げる
       のまネコ騒動。2chのキャラクターを無断使用したとして
       音楽会社「エイベックス」批判が盛り上がる
06年 3月 ニフティのパソコン通信サービスが終了
    9月 ミクシィが東証マザーズ上場
       自民党総裁選出馬の麻生太郎氏が2ch世代に期待する発言。
       ネット投票で第1位
   11月 札幌市の高校生のいじめの動画がネット上に流出。2chで話題に



実態 ベールに覆われ 2ちゃんねる

 2チャンネル月間利用(ネットレイティングス社調べ)

 2chは利用者が1000万人を突破した今もひろゆき氏が個人管理を続けている。

 ジャンルごとに「板」があり、各板に話題を議論する多数のスレッドがある。運営はボランティア任せ。利用者の要請を受けて書き込みを削除するかどうか判断する「削除人」が150人、特定のスレッドを立てる権限を持つ「記者」が二、三百人いるという。ユーザーのほとんどがネット上のハンドルネームや「名無し」を使う匿名掲示板だが、2ch側は書き込んだ人のIPアドレス(ネット上で各パソコンに割り振られた識別番号)などを記録し、保管する。

 「経営」の実態はベールに包まれている。システムを支える約60台のサーバーコンピューターは大半が米国の会社からのレンタルで、広告取りも各部の会社に委託している。ひろゆき氏は2chにかかわりのある複数の会社の取締役を務めるが、2ch自体は会社組織にはなっていない。絶頂期のライブドア社内では「広告力に目をつけて買収も議論された」(元役員)という。しかし「人権侵害や名誉棄損をめぐる訴訟リスクに耐えられない」(同)との理由で立ち消えになった。




ネット用語

◇掲示板(電子掲示板)  ネット上で利用者同士が意見や情報をやり取りするページ。画像を貼り付けられるものもある。日本では「2ちゃんねる」が最も有名。

◇顔文字  パソコンの文字を組み合わせて作った顔。感情を強調する時に使う。 1面記事の「゚∀゚」の「゚」は目、「∀」は開いた口。

◇ハンドルネーム(HN)  ネット上で本名の代わりに名乗る仮名。

◇ブログ  簡単にネット上で日々追加して書き込めるホームページ。日記に近い形式が多い。

◇スレッド  掲示板内のある話題に対する意見や情報の集まり。書き込みに対して意見が寄せられ、さらにそれに誰かが書き込む形で議論が進む。

◇ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)  広く情報を公開するほかのネット上のページと異なり、会員にならないと参加できない。日記を公開したり、共通の趣味を持つ仲間で情報交換をする。





【参考】・さくらちゃんを救う会 検証─対談
    ・連絡君倉庫(がんだるふ氏の日記)
    ・2ちゃんねらーと 救う会が初の「対話」:J-CAST ニュース
    ・がんだるふさんの日記

    ・がんだるふ氏のプロフィール

     

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